Coinbaseはx402プロトコルの開発を主導し、2024年5月に「HTTP 402ステータスコードの復活」と「ウェブリクエストへの決済ロジックの直接組み込み」というシンプルかつ革新的なアイデアでローンチしました。
x402関連トークンは一時的な人気上昇にとどまりましたが、x402は過去半年間で1億件以上の決済を処理し、API従量課金やAIエージェントのコンピュートリソース購入など、幅広いユースケースを支えています。
V1のシンプルなアーキテクチャは、実運用で限界も露呈しました。決済ニーズが複雑化し、クロスチェーン対応・スケーラビリティ・ID認証・重複決済などの課題に、従来設計では対応しきれなくなっていました。
本日、x402 V2がリリースされました。このアップグレードはプロトコルの改良にとどまらず、現場で明らかになった課題を解決するために構造自体を大幅に再設計しています。
これはV2最大の革新です。従来はAPIコールごとに決済処理が必要で、LLM推論や多段階エージェントワークフローなど高頻度な場面では遅延・コストが大きな課題でした。
x402 V2はCAIP-122 Sign-In-With-XなどウォレットベースのID認証をサポート。クライアントがウォレット認証と初回決済を完了すると、プロトコルが再利用可能なセッションを有効化します。これにより以降の同一リソースアクセス時はオンチェーン決済工程を省略できます。
トランザクション遅延が大幅に低減し、往復回数・オンチェーンコストも削減。x402は高頻度ワークロードに最適化され、人間ユーザーも自律エージェントもサブスクリプション型・セッション型アクセスの恩恵を受けられます。
x402 V2は、資産がどのブロックチェーン上でも、またはオフチェーンでも、統一決済フォーマットを提供します。
x402 V2はプロトコルをモジュール化し、仕様・SDK実装・Facilitatorを明確に分離しました。
x402 V2はDiscovery拡張を導入し、x402対応サービスがFacilitator向けに構造化メタデータを公開可能になりました。
x402 V2は決済を技術的ボトルネックから経済レイヤーへ転換し、インターネット全体の価値流通を効率化・スマート化します。各ステークホルダーの主要課題が解決されます。
エンドユーザーにはシームレスな決済と効率性を提供。有料サービスへのアクセスはログインのような感覚となり、繰り返し利用は高速・低コストで、負担や遅延が大幅に減少。初回アクセスのみ決済が必要で、同一セッションや一定時間内(複数AIコールや有料コンテンツアクセスなど)は追加オンチェーン決済不要。マイクロサブスクリプションに近い仕組みです。決済手段も多様かつ利便性が向上。
Facilitatorは最新の価格やサービス情報を自動取得し、ユーザーは常に正確かつ最新のサービス内容を確認でき、情報の陳腐化がなくサービス発見・利用が容易になります。
開発者・サービス提供者には、V2がV1のアーキテクチャ・スケーラビリティ課題を解決し、柔軟性と保守性を向上。決済ロジックは「ハードコード」から「設定・プラグイン型」に移行。API入力(データ量・モデルサイズなど)に応じた動的価格設定も容易で、複雑なビジネスモデルに対応可能。ペイウォールロジックは独立したカスタマイズ可能なモジュールとなり、各種決済バックエンドと連携し有料サービスの迅速構築・展開が可能。開発者はビジネス要件を宣言するだけでSDKが最適な決済ルート・コーディネーターを自動選択し、グルーコード削減とビジネスロジックへの集中を実現します。
AIエージェントには革命的な変化。AIは受動的実行者から自律的経済主体へ進化。エージェントはウォレットと予算を持ち、APIコールや追加コンピュートのレンタルが必要な際にネットワーク全体で最適な価値を自主的に探し、決済を独立して実行できます。
x402 V2は、x402を従量課金型ツールから柔軟な汎用経済レイヤーへ進化させました。ユーザーにとって決済はほぼ不可視となり、体験が向上。開発者は複雑なビジネスモデルを迅速展開できる柔軟なアーキテクチャを獲得。AIエージェントは低遅延・高頻度の自律的消費が可能となり、高度な自律システムを実現します。
互換性拡大、開発効率化、革新的なID・決済モデルの実現により、x402は将来のインターネット決済基盤となる可能性があります。ただし、イノベーションには課題も伴います。x402 V2の有望なビジョンは、エコシステムの普及・成熟、モジュールリスク、返金・紛争解決、規制不確実性など現実的な障壁を乗り越える必要があります。





